
世代を超え、バトンを渡すデザインを——メドレー 小山敬介
メンバーから『自分がいなくなっても、このデザインは残っていかなきゃならないから』みたいなコメントが普通に出てくる。横で聞いていると『すごい壮大なこと言ってる』とも思いつつ、それがあるべき姿だと思うんです。
医療は、人の命が関わる仕事。間違いは許されず、規制産業ゆえ厳密かつ複雑。関わるにも相応の覚悟が求められる——そんなイメージを持つ人も少なくないだろう。
だが、メドレーの人材プラットフォーム本部でデザイン室長を務める小山敬介は、そのイメージに首をかしげる。
「特別視する必要なんて、ないんですよ」
小山は2016年入社。以後10年にわたり、日本最大級の医療介護求人サイト「ジョブメドレー」のデザインを一手に担ってきた。二度のリニューアル、幾度もの機能拡張やサービス統合、テレビCMなどの多面的なプロモーション、デザイン組織の急拡大……。直近では組織内のナレッジマネジメントに注力し、「誰かが抜けても回る仕組みを目指したい」と語るなど、事業の拡大にあわせて役割も変化させてきた。
だが話を聞き進めると、こうした変化を貫く小山自身の意志が見えてくる。
医療を特別扱いしない——それは、「なくなってはいけない」領域と向き合いつづけるために必要なスタンスだ。ドラマにせず、王道を考え抜き、自分がいなくなっても残るような仕組みにする。その意識は、デジタルサービスや事業を作るというより、都市を営むことに似ている。そのキャリアから、思想と背景を辿る。
空間からデジタル。その先で見つけた「医療」という可能性
小山のキャリアは、デジタルの外側から始まった。
大学で空間設計を学び、新卒では設計事務所へ入社。科学館や博物館の展示空間を手がける仕事に携わった。一見すると現在とは毛色の異なる経験だが、そこにも今に続く要素は確かにあった。
小山「やっていたのは“体験のフローを作ること”です。たとえば宇宙をテーマとした展示で、ブラックホールの仕組みについて理解してもらえるような企画を設計するとします。その場合、ブラックホールの仕組みをどういった一連の体験、コンテンツを通して学んでもらうかを考える必要がある。単に什器の形状や見栄えを決めればいいというものではありません。だからこそ、企画や体験という点でも鍛えられた環境でした」
そこからデジタル領域へ移るのは、在職中に自社サイトを手がけたのがきっかけだった。
小山「空間って、その場へ行かないと体感できないじゃないですか。でもインターネットは場所に関係なく、電源と電波さえあればどこでも再現できる。そのフレキシブルさに、今まで取り組んできたデザインにはない可能性を感じたんです。
それと純粋に、デザインとしてのダイナミクスを感じたというか。洗練されたグラフィックが、いったんHTMLやJSのテキスト情報に置き換わって、サーバーを介してユーザーへ届けられる。その転換も独特で面白いと感じました」
そうして転職したのは、デザインコンサルティングファームのA.C.O.(現在はモンスター・ラボに統合)。当時はわずか数名のチームながら、トヨタ自動車やINAX(現・LIXIL)のグローバルサイトなどを手がけていた。小山は初心者ながら、少数精鋭の環境へ飛び込むこととなる。
小山敬介|株式会社メドレー 人材プラットフォーム本部 デザイン室長/空間設計事務所でデザイナーを務めた後、デジタル領域のデザインコンサル会社のUIデザインを担当し、メドレーに入社。現在は人材プラットフォーム本部デザイン室長として、日本最大級の医療介護求人サイト「ジョブメドレー」をはじめ、医療福祉を提供する側をサポートすることをミッションとする事業全体のデザイン統括および組織づくりを牽引。
小山「入社早々、年下のPMから言われたんです。『言われたことしかやらないデザイナーはデザイナーじゃない。期待以上のことをやってはじめてそれが仕事だし、デザイナーだ』と。技術も経験もなく転職してきた自分にとってそれが衝撃的で。自分の“当たり前”の基準が、グッと引き上げられた感覚がありました」
以来5年弱、退社する1年ほど前までは「ずっと苦しかった」と小山は振り返る。
周囲のデザイナーには到底かなわない。ならば人よりも頑張るしかない。そう考えて時間と労力を注ぎ込み続ける。だがその積み重ねだけでは、決して苦しさは拭えなかった。意識に変化が生じたのは、副業をはじめてから。平日は激務をこなし、土日はスタートアップの仕事を手伝う。心の余裕は一気になくなった。
小山「細部まで考え抜けなくなって、一度もういいやと思い、パッと提出したデザインがあったんです。でもそれを見た上司からは難なくOKが出て……。え、大丈夫なの?と拍子抜けしたのをよく覚えています」
そこで小山は、それまでの自分を省みた。考えることばかりに時間を費やし、アウトプットに必要な時間を十分に割けていなかったのだ。
小山「考えていたんじゃなくて、“悩んでいた”んですよね。同じところをぐるぐる回ってた。そうではなく、一周ちょっとくらいで形にして提案してみて、フィードバックを受けてまた改善する。そうするとバランスが良くなっていったんです。視界が一気に開けたような感じでした」
それと同時に、周囲に対する見方も変わっていった。それまでは“すごい”としか思えていなかった周囲のメンバーに対し、「あの人はデザインはもちろんだがクリエイティブディレクションが上手い」「この人はプレゼンに強い」「UIの設計に長けている」と理解が深まっていった。漠然とした「かなわない」を冷静に分析し、得意不得意の解像度が上がり、その中で自分が磨くべきスキルが見えてきたという。
そしてもうひとつ、副業は小山のその後のキャリアを決めることにもなる。
というのも、医療という領域へ課題意識を持ったことが、副業をはじめたきっかけだったからだ
小山「子どもが生まれた時、右も左もわからない状況だったのでいろんな助産師さんからアドバイスを受けたんです。すると、人によって言うことが全然違うんですよ。確かかどうかわからない情報を渡されてますます不安になるし、かと言って意思決定がブレると、子育てそのものにも影響が出る。これってデザインで解決できないのかな、と考えるようになったんです」
そこで小山は、副業でとある医療系スタートアップに関わりはじめ、やがて転職も考えはじめる。当時、医療×ITを掲げる会社は複数あったが、転職を検討する上ではある条件をおいた。それは、会社に医師が在籍しているかどうか、である。
小山「医療の会社なのに、専門職である医師がいないのはおかしいと思って。その点、メドレーは共同代表(当時)が医師で、事業にも別の医師が関わっていたんです。これは本気だな、と感じました。また代表の瀧口(浩平)にも医療に対して原体験に基づく明確な課題感がありました。業界を変えようとする意志と、それを支える人、そしてドライブさせる体制がある。ここなら企業として大きくならないわけがないと確信をもてました」
ユニークには扱わない。だが、なくなってはいけない
こうして医療への思いを持って入社した小山。だが、ジョブメドレーという求人プラットフォームに関わっていく中、「医療」というこだわりを、少しずつ手放していくことになる。
小山「最初は僕も医療は特別だと思っていたんです。けれども求人情報を集めて掲載する、働くための技術を身につけられる教科書的なコンテンツをつくる……医療や福祉というラベルを剥げば、世間一般のそれとなんら変わらない。
ではなぜ特別視していたのかといえば、それは現場を知らなかったからなんですよ。個人が望む生活を実現するために、事業者や求職者、利用者をサポートできるようなサービスを実現する。ただそれだけの話なんです」
興味深いのは、小山にとってこの気づきが単に認識を改めるだけでなく、業務上の判断軸としても「あえて特別に扱わない」ことが重要になったという点だ。
小山「一般的に考えれば、何かの領域に特化してターゲットを絞り、ペルソナを設定して最適化していく……というのが定石ですが、ジョブメドレーの場合、看護師、介護士、理学療法士……さまざまな職種があって、年齢や国籍といった属性も異なる。それぞれのユニークさを際立たせてしまうと、誰かには便利だが、誰かには不便になる。また個別で完全に最適化するにはリソースが恐ろしく必要になってしまうんです。
だから『適切に価値を届ける』というデザイナーの役割から考えると、CSやディレクターなどから集約したユーザーの声を、ある種、最大公約数的に抽象化し、どの職種であっても利用できる形に落とし込むんです。むしろユニークに見過ぎると、判断がブレていきます」
医療や介護の現場を特別視せず、ありふれた営みとして捉える——。その感覚を決定的なものとしたできごとが、つい最近もあった。ドキュメンタリー映像を制作するために介護施設で撮影していたところ、利用者の方が亡くなる現場に立ち会ったのだ。
小山「取材させてもらっていた職員の方は、気にかけていた利用者さんが亡くなられて少し落ち込んでいました。とはいえ、淡々と業務をこなし、その日の最後には『お疲れさまでした』と笑顔で帰っていかれた。
こちらは『人が亡くなっているのに』と、思うわけです。でもそれは我々から見た非日常だからであって、その方にとっては日常なんですよ。だから、人が亡くなったからと言って、過度に扱うのは違う。そう思って、映像も全部カットせずに入れました」
外部からの視点でドラマチックに描いていれば、現場を知る人は「つくられたもの」と警戒するだろう。特別視しないことは、現場を「こちら側の物差し」で測らない敬意でもある。
この特別扱いしない姿勢を持ちながらも、小山は同時に医療ヘルスケア領域に携わるゆえの矜持をのぞかせる。
小山「即物的に聞こえるかもしれませんが、我々の給与は病院や介護施設からいただいたお金が原資です。それは医療費や診療報酬、介護報酬……つまり我々が払っている税金や社会保険料から来ている。この分野で働く以上、そのパースペクティブは意識しなくてはなりません。
しかもまさに今、命の現場で働いている方々から見れば、我々は夜勤もないし、給与だってちゃんともらえている。ではそんな我々がすべきことはなんだろうか?と考えれば、成果を出すほかないんです。医療や介護の現場の課題を解決するものをつくって、安心して働ける未来を実現する。その意識が不可欠です」
目を引く表現をつくれたかではなく、現場の課題が解決したか。短期の数字を取れたかではなく、長く使い続けられるものになったか。ジョブメドレーのデザインが一貫した判断をしているとすれば、組織にそうした大前提の価値観が共有されているからだろう。
小山「デザインって、楽なほうに流れようとすれば、できてしまうと思うんですよ。ごまかしたり途中で降りたりすることもできる。単にデザインだけを考えるなら他の企業の方が楽かもしれない。でもなぜ、ここでやるのか。それは医療や福祉領域は“なくなってはならない”という強い危機感をもっているから。だから自分はここでデザイナーとしてやっている。
医師に看護師、介護職……みなさん、嘘をついたりごまかしたりすることなんてあり得ないじゃないですか。だから我々も、ごまかさずに誠実に取り組む。その上でしっかりと成果を出すんです」
考え抜いた先に残る、王道
ありふれた営みとして捉えること、なくなってはならないという危機感。そのふたつが交わるところに生まれた取り組みが、アクセシビリティ向上プロジェクトだ。当初はフロントエンドの刷新に伴う半年単位のプロジェクトを予定していたが、「誰でも使える」というプロダクト理念を真に実現するため、継続したものへと発展している。

- 「働く」を、どこまでデザインできるか。医療に向き合う人材プラットフォームのデザイン組織
- https://note.com/medley/n/n8a9c5d4be0fa
ジョブメドレーでは、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師のように視覚障害のある方が多く在籍する職種の求人や外国籍の従事者が急増する介護職の求人も扱う。にもかかわらず、長らくそうした方々が基本的な操作ができる状態にはなっていなかったという。
そのため2025年にジョブメドレーのアクセシビリティを、国際的なガイドラインであるWCAG(Webコンテンツアクセシビリティガイドライン)の適合レベルAおよびAAに配慮し、その上であらゆるユーザーのユーザビリティを改善していくと公表した。
小山 「『あらゆるユーザーにとってのユーザビリティを追求する』と言っても、一筋縄ではいきません。先述の通り、特定のユーザーにとっての使いやすさが、他のユーザーにとってのそれだとは限らないからです。ですが労働人口が減り高齢化が進んでいく中では、他業界からの転職者も、ブランクのある人もベテランも、外国籍の人も誰でも馴染めるプラットフォームでなければ課題は解決できない——『誰でも使える』はお題目ではなく、本気で実現しないといけないんです」
そうして生まれるアウトプットは、正直“無難”に見えるかもしれない。なぜなら多くの人が迷わず使えるとなると、見慣れた“王道”に収斂するからだ。それがどれほど考え抜かれたものだとしても、アウトプットからその痕跡は読み取れないだろう。だが、小山はそれでいいと考える。プロセスにこそ意味があると考えるからだ。
小山 「『誰でも』というのは、制約がないのと同じ。誰にでも受け入れられるデザインとは……と考え出すと、禅問答のようになってしまいます。ですが、その禅問答のような思考こそが大事なんです。100個アイデアを考えるなら、最初の1個目が正解だったとしても、残り99個まで考え尽くす。そのプロセスを経なければ最初の1個が正解と言えない。わかりきっていたとしてもすべて検討しきる。そうした積み重ねによってこそ、本質的なものが生まれるんです」
ここまで考え抜くのは、デザインとの向き合い方だけが理由ではない。小山の頭の中に、「そのデザインが残り続ける」という覚悟があるからだ。事実、ジョブメドレーはこの10年で二度のデザインリニューアルを行っているが、情報設計などの基本構造は大きく変えていないという。なぜなら「変えようがなかった」からだ。
小山 「決して、変化を拒んだりレガシーに引っ張られたりしているわけでもないんです。ただ、それが誰でも使えるものにつながるなら選択するし、そうでないならしない。無理に変えたり、新しさを求めたりする必要はありません。逆に、状況やニーズによっては無難ではない攻めた表現を選ぶこともあります。バランスをつねに考え続けています」
こうしたバランス感覚は、時に事業側のニーズとの間でも求められる。この取材の直前にも、まさにそんなやりとりがあった。2026年9月から配信しているテレビCMの制作現場での一コマ。最後に「登録しちゃお!」という文言をつけるか、「イェイ!」で締めるかという議論があった。
情報量の多いCMをキレイにまとめるなら、後者のほうがいい。けれども事業側としては、コンバージョンへと直接的に接続したい。そこで折衷案として、15秒版は「イェイ!」で締め、30秒版は登録訴求にした。
小山 「デザイナーとしては間違っているかもしれないけど、事業側の言いたいことも気持ちもわかる。じゃあ折衷案をとりましょう、と。でも、デザイナーという役割に固執してしまうと、線引きができなくなるんです。僕も以前は『えっ、なんでこんなデザインになるん!?』と、デザイナーとしてのエゴが出ることが多々ありました。でもそれで目的を果たせないなら意味がない。あくまで建設的な判断が重要なんです」
世代を超え、バトンを渡すデザイン
ここまで見てきた考え方の一つひとつは、単独ではどれもシビアな環境に映るかもしれない。にもかかわらず、興味深いのはこの組織からはほぼメンバーが辞めていないという点だ。
人材プラットフォーム本部のデザイン組織は現在15名。M&Aや業務委託の内製化を経て、ここ数年で急ピッチに組織拡大してきた。上場や市場区分変更という、同規模の事業会社であれば人が大きく入れ替わる局面を経ても、組織化以降、退職したのは2名ほどという。その理由を聞くと、小山は少し考えこんだ後、「医療」という軸足をぶらさずに拡大してきたからではないかと言葉を紡いだ。
小山「みんな何かしらこの領域で課題解決をしたいという価値観を持ってメドレーに入社してきています。M&Aで加わった会社も医療やヘルスケア系ですし、目指している方向が変わらず一緒なので、そもそも会社と個人の間にズレや違和感が生まれにくいんだと思います。
目的が『売上拡大』とかだったら、会社のフェーズでやり方が変わるかもしれません。でもメドレーの目的は、あくまで“医療ヘルスケアの未来をつくる”こと。そのためにやれているかという視点で議論し続けてきたので、基本ブレがないんです」
こうした安定した状況にもかかわらず、小山は「極論、誰かがいなくなっても、1年は問題なく回る仕組みを構築したい」と口にする。一見すると、人を代替可能にしようとする方針にも読めるかもしれないが、想いはその逆側にある。
小山「よく『長期的な視点で考えよう』といいますが、どれほど長期的に考えられているかというと全然足りていないと思ってるんです。僕はなるべく長くこの業界に向き合い続けていきたいと思っていますが、20年、30年先まで行けるかどうかというと、誰もそんな保証はしてくれない。ですが、僕が働いてきた10年ほどを振り返ってみると『人材不足が解消したか?』と問われればむしろ深刻化している。
つまり、向き合っている課題は、自分の人生よりも長いスパンで取り組むものになる……そう考えたら、自分ひとりでなんとかできるようなデザインや課題解決では、到底足らないんです。どこかで力尽きても、事業は止めちゃいけないし、業界に貢献し続けるには、バトンを渡すような取り組みをしていかなければならないんです」
医療ヘルスケア領域をことさら特別視する必要はないが、一定の独自性は存在する。患者や利用者、医療・介護従事者、経営者、行政……多様なステークホルダーが関わり、多層的に解くべき課題は無数にある。しかもそれらは、年を追うごとに深刻化していく可能性もある。それらと向き合うからこそ、組織もまた持続可能性を追求し、複雑にからまる課題を解決しつづけられなければならないのだ。
小山「正直な話、ほぼ辞めないからこそ、実際に退職者が出たとき”激痛”だったんです。なんならまだ止血中かもしれません(笑)。だから、一人ひとりしっかりフォローして、……みたいに一層気にかけるようになったんですが、そればかりでも違うな、と思い仕組みによる継続性にも注力しているんです」
そうした直近の取り組みがナレッジマネジメントだ。同社には、「ドキュメントドリブン*」と呼ぶ文化が根づいているが、それを土台にさまざまな知見や取り組みを共有・再現可能なものとすることで、自然とメンバーの意識にも変化が生じてきているという。
- ドキュメントドリブン*
仕事を始める際にドキュメントを先に書き出し、それを駆動力として活用して自らやチームを効率的に動かします。ドキュメント化されていないことにより多くのメンバーが同じことを1から考えたり、読めばわかることを口頭伝承したりするような時間の浪費を予防します。ドキュメントもシンプルで無駄のないものを志向することで、将来のチームの生産性にも大きく貢献します。(メドレーのカルチャーより)
小山「ドキュメントドリブンって、ある種自分を客観視することなんですよ。ドキュメントに落とし込んだ内容が周りに伝わっていないなら、正しく客観視できていない。誰にでも伝わるようにドキュメントに残すには客観視する努力も求められます。そして、それを積み重ねてきたことで属人化を良しとしないことが、組織文化になっていると最近では感じます。
例えば他のメンバーからも『自分がいなくなっても、このデザインは残っていかなきゃならないだから、そう考えるとナシかもな』みたいなコメントが普通に出てくる。横で聞いていると『すごい壮大なこと言ってるな』と思いつつ、それがあるべき姿だと思うんです」
デザインで課題解決できる領域がある──そう考えてメドレーへ入社した小山は、10年かけてもまだ「解決しきれない課題」に対峙している。しかしそこには、むしろ未来への前向きな姿勢が見てとれる。
小山「医療ヘルスケア領域って、意外と変化が起こり続けていて、制度や市場環境も絶えず変わり続けているんです。一方で、そもそも課題がすべて解決する保証はないし、解決しない未来もある。現状維持で、これ以上悪くならないことが最善策の場合もある……と考えると、終わりのない話でもある。
そういう意味では、都市計画っぽいんですよね。『大きなビルを建てて終わり』じゃなくて、都市の中で人々が幸せかつ健やかに営みつづけていくのが目的で、それ自体にゴールはない。解決するかどうかはわからないけれど、より良くなればいい。そんな感覚なんです」
空間からキャリアを始めた小山にとって、都市のような時間軸で物事を捉えるのは、ごく自然な感覚だったのかもしれない。
小山「建物も、なくなるものはなくなるじゃないですか。手をかけたから残るというものでもなく、必要とされるから残る。医療も介護も、必要とされているから残っている。メドレーの事業もデザインも、必要とされて残るものにしていきたいと思っています」
医療ヘルスケア領域は、なくなってはいけない。だから小山は、特別扱いせずに考え抜き、目を惹かずとも王道のかたちに落とし込み、未来の誰かが受け取れるバトンとして残す。ビルを建てて終わりにせず、都市を営むようにつづけるために。
必要とされるから、残る。メドレーのデザイン組織がつづけているのは、そういう類のデザインである。