designingはフォーカスするトピックを定めます

年間でフォーカスするトピックを制定。それに基づいたコンテンツを発信していきます。

いつもdesigningをお読みいただきありがとうございます。編集長の小山です。

2024年も1カ月が過ぎましたがこのたび本年のdesigningのあり方を共有したく、私の名前で筆を執ることにしました。

これまでの6年間、私たちは自分たち“designing”を主語として、考えなどを共有したり、前面に押し出すことをあまり積極的に行ってきませんでした。というのも、我々の意思や意図は記事をはじめとする接点に、意図せずとも盛り込まれてしまうものです。加えて、あくまでdesigningの主役はデザインに携わる方々。編集部が前にできるべきではないという思いもあった。ゆえに、“前に出る”のはそれなりの理由があるときにとどめていました。

ただ、ここ数年我々自身が記事に加え、Any by designingなどのイベントや、法人パートナーなどのコミュニティなど、接点の幅が広がり、出会う場面によってその見え方に差異が生じていることが増えてきていました。

また、外部環境を見ても、国や行政レベルでデザインへ注力する姿勢が強まっていることもあってか、デザイン関連の活動をする企業や団体、中〜大規模なデザインイベントなど、デザインの周辺で活動する方々も増加。各々の持つ「デザインに対するスタンス」がより重要ではないかと感じる機会が増えました。

それもあり、我々自身「姿勢を表す」必要があるのではないかと考え、本記事にいたっている次第です。

ただ、この「姿勢」は抽象度を上げると、「デザインの可能性を探究する」という媒体のコンセプトや、活動趣意に掲げるような言葉になってしまう。もう少しかみ砕き、私たちの“いま”の姿勢を示すものがないか。

そこで今回まとめたたのが「年間テーマ」です。

紙媒体や雑誌であれば号ごとにでる「特集」が、その媒体の姿勢を可視化します。私たちも特集は展開していますが、恒久的に存在するものが中心なので、意匠上で強弱をつけていないため、これを変更しても“横並び”のひとつにしかならない。そこで「年間テーマ」というものを掲げることにしました。

2024年のテーマに掲げるものは3つ。このテーマはいずれも「編集部が今年追うと決めたトピック」です。これだけを取り上げるわけでもありませんが、私たちが今、特に「投げかけたいこと」として意図的に掲げるものになります。

1.デザイン倫理の論壇

デザインに限らず、あらゆる専門分野において倫理観や職業倫理は重要な論題です。
特に近年はその議論の必要性が叫ばれる機会も多く、デザイン分野でも、ダークパターンのような象徴的な例を含め、いくつかの具体トピックを入り口に問われ直す機会が増えました。

ただ、倫理観・職業倫理は、常に議論を繰り返されるべきトピックでもあるともいえるのではないでしょうか。無論、顕在化した課題の指摘や、共通認識として“在るべき”を設定することも必要ですが、変化し続ける社会の中で、在るべき倫理が特定の時点でFIXすることなどありえないはず。

ですが、現実問題として、そういった“目前”というより“前提”に在ることまで常に目を配り続けることは決して容易でもないと思います。ゆえにこうしたトピックを議論する人はどうしても限られてしまっている。

一方で、先述の通り、いくつかのトピックを切り口に倫理に目を向けたり話題にあげる人の数は着実に増えたとも思っています。この機に、倫理がデザインを取り巻く人々の間で恒久的に議論され続ける議題にできないか。そう考え、重点トピックとしてセレクトしました。

2.生態系/システムのまなざし

昨今、「さまざまな領域で同時並行で活動する」人が増えつつあるように感じます。言い換えるなら、全く異なるレイヤーや専門分野、領域の事業や活動を、同時並行で手がけているような企業や人物です。

一見「色々やってる」ように見えるけれど、当人にとっては「全てに共通する意味や接点がある」。目指す世界や思想・哲学に対し、多角的に動いているのです。ある側面では「システム思考」的に構造を捉えながら活動しているとも言えますし、ある側面では「生態系のような活動」とも言える。

ちょうど先日公開したVUILD秋吉さんの取材記事では、「生態系」という言葉でこの価値観を表現していました。

「僕たちの事業は、いわば“生態系”です。従来のスタートアップは1社1プロダクトが主流で、確実な市場の着実なニーズに向け全力投球して、手堅く上場を目指してゲームに勝っていく思考が一般的でした。

しかし、僕たちは事業やサービスの種を“同時並行”かつ“段階的”に発射している。例えば、受託事業で生まれた売上を、次は新事業のNESTINGに投資していく。長期的なビジョンの実現を第一に考えて、いま自分たちがやれることを積み上げ、少しずつ事業を収益化して育てています」

「つくる」を復権させるために。必要なのは、手を動かし続けること──VUILD・秋吉浩気

デザインの射程が広がる中では、こうした「生態系/システムをまなざすこと」は意外と重要なのではないか。昨今価値を発揮している人はこの“まなざし”があるのではないか。そう考え、少々抽象度高いトピックながらこの言葉をセレクトしました。

3.インハウスの時代

ITをはじめ、大手メーカー、金融やサービスなど多種多様な事業会社でインハウスデザイナーの活躍を耳にする機会が増えました。

制作こそが花形だったのも過去の話。社会的インパクト、待遇面の優位性、バイネームでも活躍が可視化されやすくなったことなどもあり、著名なクリエイターがインハウスへ移る事例も増えています。

それと並行するように、「インハウスデザイナーの活躍が、大きな企業を変革しつつある」という話を耳にする用にもなりました。わかりやすい例で言えば、歴史ある大手メーカーが製品群単位で明らかに品質が上がっていたり、ブランド認知に劇的な変化を遂げたり、複雑なサービスの体験が素晴らしく明瞭になっていたり....。

これらは「デザイン経営」という切り口でも説明できるかも知れませんが、これは経営レベルでの尽力に限らず、インハウスデザイナーの活躍が新たなフェーズに入りつつあるのではないか。そう考えています。その現場をより精緻にお伝えします。

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もちろん、こうしたテーマに限らずアウトプットは出していきますが、私たち編集部として今年優先的に発掘していくのはこれらの内容とする予定です。記事、イベントはじめ、さまざまな形で。これらのトピックに関心をお持ちいただける方は是非活動を追いかけていただけますと幸いです。

またもし、これらのトピックについて一緒に探究したい・すでに探究していて何かを共有したいという方がいらっしゃいましたら、個人/法人問わず是非ご連絡いただけますと幸いです。designingという場を活かしつつ、一緒に探究する形を模索できればと思います。

今年も、designingをよろしくお願いいたします。

Credit
執筆
小山和之

designing編集長・事業責任者。大学卒業後、建築設計事務所、デザインコンサルでの編集ディレクター/PjMを経て独立。2017年designingを創刊。2021年、事業譲渡を経て、事業責任者。

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