シリコンバレーのデザインリーダーから学んだ6つのこと

まず、私が驚いたことから始めよう。ディレクターやマネージャーは皆、プロダクトデザイナーに、クリエイティビティを重要視していないという。

本記事は、Chris Lee氏がMuzliに寄稿した記事『6 Things I Learned Interviewing Design Leaders From the Valley’s Top Companies』を公式に許可をいただき翻訳したものです。

プロダクトデザイナーとして働く上で、私はピープルマネジメントにも関わっている。

ただ、私はこの領域の専門ではない。そこで、世界のトッププレイヤーはどのように考えデザイナーのマネジメントを行っているかを学ぼうと考えた。

私は、Dropbox、Airbnb、Facebookなどのデザインマネージャーやディレクターたちにアプローチし、良いチームと素晴らしいチームの違い、良いデザイナーと素晴らしいデザイナーの違いを尋ねた。

彼らの話は、デザインのアウトプットに関する私の考え方を完全に変えてしまった。以下私が学んだことを六つに分けて紹介したい。

1. クリエイティビティは重要ではない

まず、私が驚いたことから始めよう。話を伺ったディレクターやマネージャーは皆、採用するプロダクトデザイナーに、クリエイティビティを重要視していないという。デザイナーはクリエイティブであるという前提をひっくり返す回答だ。

しかし、その理由は非常に納得感のあるものだった。芸術と異なり、デザインは成功と失敗がはっきりしている。デザインは単なる表現ではなく、問題を解決する意図を持った表現だ。

つまり、デザイナーにとっては問題の理解と解決する力が必要になる。ピープルマネジメントを行なう人々は、採用するデザイナーが好奇心を持ち親身になれる人間かを重視する。

好奇心があれば、自然と物事の仕組みを掘り下げる。誰かから問題を提示されたとき、対象を理解するために、その問題のあらゆる側面を掘り下げ、必要なだけの時間をかけるだろう。

親身になれば、複雑な人を理解し、感情と機能のせめぎ合いに集中できる。プロダクトデザイナーにとって重要なのは、クレイジーなアイデアを生み出す力ではなく、解決策を探す上で、問題の理解に時間をかけることなのだ。そして、大抵の場合問題をよく理解すれば、解決方法は見えている。

2. 普遍的に素晴らしいチームは存在しない

私は、優れたチームを率いるリーダー達に、「いかにして素晴らしいチームを作り上げたのか」を尋ねた。しかし、彼らから返ってきたのは、「Mediumで素晴らしいチームがDropboxで素晴らしいチームとは限らない」というものだった。成長角度の高いチームが、新しい市場に参入する上で優れたチームとは限らないのだ。

素晴らしいチームはその問題に最適であるときだけ素晴らしい。その問題に合った人材を配置すれば、成功を手にできる。客観的評価指標によると世界で一番のチームでも、間違った問題に立ち向かわせれば、結果はでない。

あらゆる事象や課題を経験できる人はいないし、誰もが得意分野を持っている。“プロダクトデザイン”の中でも、デザイン思考が得意な人もいれば、細かい作業が得意な人もいる。デザインマネージャーとして自分が解決すべき問題は何かを理解することが重要だ。

3. 実行しない戦略に意味はない

デザイナーの採用について経験豊富なマネージャーたちに質問した。私は、「いかにスタンフォードのデザイン思考コースを出たような優秀な人々を採用するかが重要」という話をするだろうと考えていた。

しかし、実際は世界一の戦略思考を持っていても、実行し形あるデザインや目に見えるものの判断ができなければ、職場では価値がないというのが答えだった。

多くの消費者が、個々のプロダクトではなく、企業体としていかに顧客と向き合うかを求めている。マーケティングのメッセージとプロジェクトチームがやることは別——という日々は終わった。デザイナーにも、この視点であらゆる仕事と向き合うこと求められる。

もちろん、すべての面でエキスパートであることを期待するわけではない。しかし、デザイナーは、プロダクトデザインプロセスにおいて重要な役割を果たす。1ピクセルを突き詰めるようなビジュアルデザインを担当する人であっても、プロダクトの目的や戦略は理解していなければならない。

4.エゴは敵

“Brilliant Jerk(素晴らしいが嫌なやつ)”については長らく議論が交わされている。スティーブ・ジョブズはがんこな人だったが、それでも彼の目指すビジョンが人を集められたのはかなりはっきりとしている。個人にできることには限りがあるが、ほかの人と共に働けば、そのインパクトは飛躍的に拡大する。

すると、ほかの人と共に働く素質は必須条件となる。エゴは、話を聞いたすべてのマネジャーが即座に雇用する資質がないと判断する理由のひとつだった。あなたが非常に賢く、敏腕で、素晴らしい実績を持っているとしてもだ。人々と共に働くことを拒絶すれば(エゴはそうさせる)、大きなビジョンは達成できない。

5. 方向性が見えなければ進まない

イーロン・マスクが述べているように、企業は「ビジョンを追うこと」と「規模を追うこと」、2つのベクトルを持っている。たとえ10人の賢い人間が一堂に会しても、彼らが同じゴールを目指していなければ、どこへも迅速に向かうことができない。

ひとりのゴールが昇進することで、もうひとりのゴールが素晴らしいプロダクトを届けることであれば、彼らの議論はムダになる。

同様に、ある人は常に自分自身と周りにいる人々の幸せを望み、別の人は名誉を求めているのであれば、衝突は避けられない。前者は建設的な批判で後者に挑み、後者は防御策を取り憤慨することになるだろう。

6.肩書きは無意味である

それぞれの企業で、技術的に熟練していることはどのような意味があるかをマネージャーたちにたずねた。彼らが共通して語ったのは、経験値や肩書きに意味があるのではなく、「ほかの人からいかに認識されるか」に意味があるのということだった。

言い換えると、上司であることは、「ほかの人に良い影響を与える能力」が重要になる。あなたは、議論の場で他の人ができない価値を付与できるだろうか。あなたは、自分が生み出すものに関して、考え、教え、チームがその価値を理解する手助けをできるだろうか。

世界に影響を与えるのにチームが必要だとだとすれば、自分の価値を示す最良の方法は、チームそのものに影響を与えることだ。肩書きというカードでプレイしている人々は、地位にもとづいて権力を行使し信用を失っていく。ついてくる者がいなければ、必然的に力を失うこととなるだろう。

いま、あなたがプロダクトデザイナーになろうと考えている、あるいは、すでにピープルマネジメントを担当しているのであれば、本記事から学べることがあれば幸いだ。誰もが常に新しいことを学び続けている。あなたがこれを読んでいるということは、学ぶ気持ちと、自らのスキルを向上させたいという想いがあることを意味しているだろう。

私は、あなたが尊敬し学ぶべきと考える人に、実際に会うことを勧めたい。かつて私自身、議論に参加したり交流したりせず、オンラインの情報から人々の考えを読んでいる立場だった。とはいえ、知識の共有はそこへアクセスできない人にとって大きな意味を持つ。あなたが、それを伝える側になってくれると嬉しい。

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