「問い・意志・実験」が鍵を握る、AI時代の組織づくり——X Corp. Japan 尾崎琢也 × NTTドコモビジネス 小林雅敏 × 日立製作所 木幡康幸

NTTデータのグローバルデザインスタジオ「Tangity」は、例年グローバルで「Tangity Directions」というイベントを開催している。"We humanize complexity."をミッションに掲げる同組織らしく、デザインの役割やその今後について考え語らう機会として、拠点ごと運営をしているという。

2025年10月30日に開催された「Direction25 TOKYO」では「共鳴する未来」をテーマに設定。この変化が著しいAI時代に、CX、EXの両面から"人と組織の体験"について考える共創の場を設けた。designingでは全3本にわたり本イベントプログラムのレポートを掲載していく。

1:“人起点”で拡張し続ける、トヨタのUX──トヨタ自動車 山田薫
2:メガバンクの顧客体験をLTV経営とAIが変革する理由——三菱UFJ銀行 長谷川亘
3:「問い・意志・実験」が鍵を握る、AI時代の組織づくり——X Corp. Japan 尾崎琢也 × NTTドコモビジネス 小林雅敏 × 日立製作所 木幡康幸(※本記事)

生成AIの普及によって、一人ひとりが扱える情報や、アウトプットの量は飛躍的に高まりつつある。一方で、“AI時代の組織”をどう設計し、どのように動かしていくのかは、いまだ多くの企業が手探り状態だ。

NTTデータのデザイン集団Tangityが主催するイベント「Direction25 TOKYO」で行われたセッション「共鳴する未来へ──変わりゆく人・組織・デザインの未来図」では、そんな「AI時代の組織づくり」に潜む課題と可能性が、デザインを切り口に語られた。

登壇したのは、X Corp. Japanの尾崎琢也、NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)の小林雅敏、日立製作所 DesignStudioの木幡康幸。デザイン組織、グローバルプラットフォーム、巨大エンタープライズ——それぞれが異なる現場で、AIと人・組織の関係性をアップデートしようと試行錯誤している。

Tangity Head of Designの村岸史隆をモデレーターに、これからの組織のあり方を探っていく。

AIが「隣にいる」デザイン現場の現在地

ディスカッションは、まず登壇各社におけるAI活用の“現在地”から始まった。モデレーターの村岸がセッションの狙いを共有し、最初の問いを投げかける。

村岸

生成AIの進化がドラスティックに進む中で、人や組織がどう変わりつつあるのか。三社それぞれの視点を共有することで、単なる成功事例の紹介にとどまらず、「これからのデザイン組織が成功するための条件」が浮かび上がるはずです。

AIの進化によって、現場で求められるスキルや組織のあり方は、この数年でどう変わっているのでしょうか。まずはお三方の組織の“現在地”を教えてください。

最初に応答したのは、日立製作所 DesignStudioの木幡だ。同氏は「デザイン for AI(生成AIのためのデザイン)」と「デザイン by AI(生成AIによるデザイン)」が同時進行で加速していると、自身の組織の状況を説明する。

具体的には、ユースケースやペルソナの定義、リサーチ、ストーリーボード作成など、デザイナーの日々の業務におけるAIの介在が、2025年に入ってから一気に“当たり前”になってきたという。

木幡

たとえば、新しいサービスのコンセプトを議論している最中に、議事録を生成AIに読み込ませると、「こんな感じでどうですか?」と、即座にUIの案を出力してくれます。それがたたき台になり、議論がさらに発展していくんです。

生成AIは、もはや特別なプロジェクトのための“新技術”ではありません。ペルソナやシナリオのたたき台、UIのラフスケッチなど、さまざまな場面で「初手」を一緒に考えてくれる“バディ”のような存在になりつつある。そのおかげで、「何を決めるのか」「どこに責任を持つのか」といった部分に、より意識を割けるようになってきています。

木幡康幸|株式会社日立製作所 DesignStudio Chief Design Strategist
デザインとコンサルティング両軸で20年の経験を持ち、NTTデータ経営研究所でのコンサルタント経験を経て、デンマーク発祥のデザインファームのDesignitの日本法人立上げ、ディレクターとして国内顧客とグローバルのデザイナ間のブリッジの役割を担う。組織デザインやサービスデザイン・UI/UX案件などにおける伴走支援の経験を持つ。2022年に日立製作所 DesignStudioに参画、国内顧客企業に対するDX案件の案件化、プロジェクトリードなどを務める。

これを受け、X Corp. Japanの尾崎がマイクを取る。同氏が紹介するのは、『X』というプラットフォームならではの強みである“リアルタイム性”と生成AIを掛け合わせた事例だ。

従来のマーケティングリサーチでは、アンケートやインタビューなどで集めた過去のデータを、人間が時間をかけて分析し、インサイトを導き出すことが一般的だった。一方で同社では、対話型生成AI『Grok』の導入により、X上に流れる「いまこの瞬間」の会話から、リアルタイムにインサイトを抽出する取り組みを進めている。

尾崎

X上での会話は、いわば編集されていない、人々の“生の声”です。これまでも、こうした生の声を検索して読み解きながら、オーディエンスのインサイトを人間の手で抽出してきました。今はそこにGrokが加わり、膨大な会話をほぼリアルタイムで検索・学習し、インサイトの候補を提示してくれます。その結果、より精度の高いインサイトを、より短い時間で導き出せるようになりました。

たとえば新しいサービスのコンセプトを検討する際、事前調査の結果だけでなく、「いまこの瞬間、そのテーマについてどんな言葉が飛び交っているのか」をGrokで抽出し、そのままワークショップの素材にする。数週間前や数カ月前のユーザーインタビューでは捉えきれない「今の空気感」や、文脈の揺らぎ、感情の動きまで含めて、リアルタイムのインサイトを議論のテーブルに上げられるようになってきています。

尾崎琢也|X Corp. Japan K.K. Head of Next, Japan
広告代理店でアート/クリエイティブディレクターとして国内外の広告賞を受賞。Facebookを経てX(旧Twitter)へ。Nextチームのリーダーとして、オーディエンスインサイトを軸にブランドの価値を高める戦略・クリエイティブ開発を推進している。

続いて、NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)の小林が、AIによる業務変革について紹介する。具体例の一つに挙げたのが、議事録作成の自動化だ。今では一般的になりつつある“AI議事録”だが、1万7,000人規模の同社で浸透すれば、生産性の観点でも大きなインパクトがある。

加えて、生成AIアシスタント『Copilot』を“壁打ち”に活用する文化が、全社で根づき始めているという。

小林

社員の多くがAIを議論の壁打ち相手として日常的に活用しています。1万7,000人規模の組織で「会議の前にまずAIと考える」ことを標準装備にしたことで、「会議で初めて考える」時間がかなり減ってきました。その分、会議では本当に意思決定が必要な論点に集中できるようになっています。議事録作成も音声認識といった“記録の効率化”を越えて、会議そのものをアップデートするフェーズに入ってきた感覚です。

一方で、いわゆる最後の“詰め”の部分は、まだAIだけでは難しい。実行可能な施策やロードマップに落とし込むのは、依然として人間の役割です。だからこそ、「どこからどこまではAIに任せられるのか」「そのためにどんなデータやルールが必要か」を、経営層からの強いオーダーも受けながら設計しているところです。

小林雅敏|NTTドコモビジネス株式会社(旧 NTTコミュニケーションズ) デジタル改革推進部 DX戦略部門 第一グループ 担当部長
2002年NTTコムウェア株式会社に入社。法人営業(リテール領域)、人事・人材開発、ビジネス企画の担当を経て、2015年にNTT株式会社(旧 日本電信電話)に転籍。NTT 技術企画部門 IT推進室では、NTTグループにおけるグループNW最適化、グループ内共通基盤推進(デジタルPF)、データガバナンス(コード標準化・MDM・データレイク)の施策推進に従事。2023年7月からNTTドコモビジネス株式会社 デジタル改革推進部に転籍し、DX戦略・推進を担当。

AIで底上げされた個人の力を、どうチームに還元するか

三社の事例から見えてくるのは、AIの業務活用がすでに“当たり前”の前提になっていることだ。そのうえで、どんな組織であれば、その前提を活かして価値を生み続けられるのだろうか。

この問いに対し、木幡が提示したキーワードが「共鳴」だった。スキルや時間といった不足分が生成AIによって補われていく世界では、個人ごとの能力差は今よりも小さくなる。誰もが一定レベルのアウトプットを出せるようになったあとに違いを生むのは、「誰と誰が組むか」「そのチームがどんな空気感で動くか」といった、人と人の関係性だと指摘する。

木幡

たとえば、この人と話していると楽しくて前向きになれるとか、一緒に議論していると一人では思いつかなかった観点やアイデアが湧いてくるとか。そうした経験は、AIだけでは生まれない、人同士だからこその“響き合い”だと思うんです。

技術や役割の組み合わせによるものもあれば、感情の乗り方によるものもある。そうした響き合いを当たり前につくり出せる組織かどうかが、これからいっそう重要になってくると感じています。

木幡の話題に重ねるように、尾崎も独自の視点を提示する。Xは、イーロン・マスクによる買収後、大幅なスリム化やフル出社への移行など、思い切った組織変革が話題となった。同氏はその渦中において、「同じ場に集まること」が生み出す力を改めて実感したと語る。

尾崎

AIを使えば、一人で考えられるパターンやたたき台のバリエーションは、これまでよりずっと増やせます。個人としての思考の量や質は、AIと組むことでどんどん拡張されていくと思うんです。

ただ、それだけでは足りないとも感じています。イノベーションは、一人で机に向かっていてもなかなか生まれず、誰かとアイデアや仮説をぶつけ合うなかで、ようやく形になっていくものだからです。

同じ空間にチームがそろっていると、ちょっとした雑談の延長でヒントが生まれたり、互いの気づきをその場ですぐ共有できたりする。そういう小さなやりとりの積み重ねが、結果的にアウトプットの質を上げている感覚があります。

AIはある意味で“個人戦”を強くしてくれる存在です。そのうえで「どんな場で、誰と集まって働くか」を設計することが、これからの“チーム戦”における鍵になると考えています。

一方で、NTTドコモビジネスのような1万7,000人規模の組織では、全員が一つのオフィスに集まることは現実的ではない。全国に散らばるメンバーが、それぞれの現場でAIを使いながら働いている。

小林

組織の規模が大きくなるほど、個人の生産性を上げるだけでは限界があります。全員が物理的に、同じ場に集まることも難しい。一方で、NTTグループとして「つなぐ」を使命にしている以上、オンラインでもオフラインでも、同じ前提や文脈を共有しながら議論できる状態を作りたい。それをどう設計するかが重要になります。

たとえば、会議後には、そこで生まれたドキュメントやメモがオンライン上に整理されて蓄積されていき、別のチームやプロジェクトでもすぐに再利用できるようにする。この仕組み自体は、もちろん以前からありました。今後はこの仕組みを大幅に効率化し、よりダイナミックに、組織全体としての“学習速度”を上げていくことを狙っています。

各自が自分のタイミングでAIと対話しながら考えを深め、その結果を持ち寄って議論する。そうした非同期の動きと、リアルな場でのコラボレーションをどう組み合わせるか——巨大組織の「OS」をアップデートしていく営みそのものが、小林が向き合う課題の中心にある。

小林

将来的には、一人ひとりのそばに複数のバーチャルエージェントが“チームメンバー”として並ぶイメージを持っています。ただ生産性を上げるための“秘書ボット”を増やしたいわけではありません。NTTらしいコンプライアンスや倫理観、カルチャーをきちんと学ばせたうえで、『この組織ならこう判断するよね』という感覚まで含めて支えてくれる存在にしていきたいんです。

人間が未来の方向性やビジョンを描き、AIがそれを踏まえて具体的な打ち手を実行していく。そうやって、人とAIがうまく混ざり合った“ハイブリッドなチーム”をどこまでつくり込めるかが、これからの大きなチャレンジだと感じています。

痛みを原動力へ変える設計、ビジョン、フレームワーク

AIが前提になるなかで、チームや人の配置をどう設計するか――議論は、組織の「動かし方」へと移っていった。

木幡は、生成AIによって一人ひとりのスキルやアウトプットの水準が底上げされていくからこそ、「人の組み合わせを意図的に変え続けること」が大事になると語る。

木幡

同じメンバーで長く仕事をしていると、考え方やプロセスが固定化しやすくなります。AIで日々の業務は効率化されても、同じような成果物ばかりになってしまっては意味がない。だからこそ、プロジェクトや部署をまたいだシャッフルを通じて、常に新しい視点が混ざるようにしていくことが重要だと考えています。

こうした「意図的に揺らす」動きが現場の負担にもなりうることを踏まえ、村岸は「メンバーを動かしながらも、チームとしての一体感をどう保つか」と問いを投げかけた。

村岸史隆|株式会社NTTデータ Tangity Head of Design
アメリカでデザイナーとして勤務後、日本に帰国。外資の事業会社、広告会社、出版社、デザインファームで、プロダクト、サービス企画、デザイン組織立ち上げなどを実施。2020年NTTデータに入社し、デザイナー集団「Tangity」のデザイン責任者としてさまざまなプロジェクトの推進からデザインディレクションまで幅広く取り組んでいる。

尾崎は、その鍵をビジョンに見出す。大きな配置転換や事業ポートフォリオの変更は、現場に痛みを伴う。しかし、その痛みが「どんな未来につながるのか」が共有されていれば、現場の納得感は大きく変わるという。

尾崎

イーロン・マスクがXを買収した当初、「言論の自由を守る」というビジョンが掲げられました。当時は、その言葉が自分たちの業務とどう結びつくのか、正直なところ掴みきれていなかったんです。

けれども、その後のプロダクトの変化や生成AIを含む機能の導入を見ていると、「多様な声が届きやすくなり、その声をきちんと扱える場にしていく」という方向性が一貫していることが、少しずつ実感できるようになってきた。大きな変化が起きるときほど、「何を実現するための変化なのか」というビジョンが共有されているかどうかで、現場の受け止め方は大きく変わると感じています。

NTTドコモビジネスの小林が紹介したのは、同社が導入している「エンタープライズアーキテクチャ(EA)*」だ。もともと大企業の間では広く知られているフレームワークだが、同社ではこれを「生成AI時代の土台」として再定義している。事業やシステム、人材など組織全体の構造を一枚の絵として可視化し、「どこに投資するのか」「何を優先して変えるのか」を議論する。そのための共通言語として機能させることで、レガシーな領域と急進的なAI活用のバランスを取りながら、変革を進めているのだ。

小林

EA自体は目新しい概念ではありませんが、NTTグループにとっては“安全に変化していくためのOS”のような位置づけになっています。「つなぐ」を使命にしている以上、その前提には、安全で信頼できる情報の流通が欠かせません。EAは、その前提を守りながら、変化の優先順位を決めていくための“地図”として機能しています。

1万人以上の社員が同じ絵を見ながら話せることで、「なぜ今この変化に取り組んでいるのか」「このAI導入はどの文脈につながっているのか」といったストーリーを共有しやすくなる。個々の現場で起きているDXやAI活用を、バラバラな点ではなく、ひとつの全体像の中に位置づけていくための“土台”なんです。

組織を意図的に揺らす設計、痛みを意味づけるビジョン、進む方向を示す共通フレームワーク。アプローチは異なりつつも、「人とAIが混ざり合う時代に、どこへ向かうのか」を示す道しるべを整えようとしている点は、三社に共通している。

問い・意志・実験──AI時代に人が担うこと

組織やチームのあり方を一通り議論したあと、話題は「そのなかで働く一人ひとりは、これから何を身につけるべきか」へと移っていった。村岸があらためて三社に問いかける。

村岸

ここまで、AIを前提にした人と組織の話をしてきました。では、その世界で“人として”必要とされるものは何でしょうか。スキルでも、マインドセットでも構いません。皆さんが今、大事にしたいと思っているものを教えてください。

生成AIがタスクをこなし、「それらしい答え」を素早く返してくれる時代において、人間の役割はどこにあるのか。尾崎は、「正解を出すこと」そのものではなく、「どんな問いを立て、どう問い直せるか」にこそ、人間ならではの力が宿るのではないかと話す。

尾崎

AIの回答に「なんだか違うな」と感じたら、そのまま否定するのではなく、対象や条件、時間軸を少しずつ変えて聞き直してみるようにしています。問いの角度をずらしながら何度も投げかけることで、「自分は本当は何を知りたかったのか」がだんだん見えてくる感覚があるんです。

その背景にあるのは、やはり“好奇心”だと思います。生成AIが出してくる答えを、そのままゴールにしてしまうのではなく、「ほかにどんな見方があり得るのか」「もう一段深く知ることはできないか」と問い直してみる。そうした“もっと知りたい”という感覚そのものは、人間の側にしか生まれません。だからこそ、どんな問いを立てるのか、どこまで問いを掘っていくのかという姿勢が、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。

この“問いを掘る力”という視点に対し、木幡は“Will(意志)”とも言うべき軸の重要性を語った。

木幡

生成AIはあくまで「どうやるか」を無数に提案してくれる存在です。でも、「そもそも何のためにやるのか」「どんな価値を生み出したいのか」といった部分は、人間の側で決めなければいけない。ここが曖昧なままAIを使っても、効率は上がるかもしれませんが、結果として何が良くなったのかが見えづらくなってしまいます。

逆に、目指したい状態や譲れない価値観がはっきりしていれば、AIはその実現のためにさまざまなルートや選択肢を提示してくれる、心強いパートナーになります。便利なツールを「うまく扱えて終わり」にせず、自分は何を成し遂げたいのかを言語化し続ける。それこそが、今後のAI活用ではより重要になっていくと感じています。

小林は、日本企業特有の慎重さを踏まえつつ、「まずやってみる」マインドセットの必要性を強調する。完璧な要件定義や前例を待つのではなく、「生成AIがあるからこそ、リスクを抑えて試せる小さな実験」を重ねていくことが重要だと言葉を続ける。

小林

できないかもしれないけれど、AIがあるからやれるんじゃないか──そう思って一歩を踏み出すチャレンジ精神こそが、これからの私たちに最も必要なものではないでしょうか。

日本人はどうしても慎重で、「本当に大丈夫か」「前例はあるか」と確認したくなります。でも、AIは小さく試すハードルをぐっと下げてくれる存在です。完璧な正解を求める前に、まずは信用して触ってみる。その積み重ねの有無が、数年後には事業のスピードや成果の差として、はっきり現れてくると思います。

最終的に、議論は「問いを更新し続ける好奇心」「何を成し遂げたいのかというWill」「AIを信頼して小さく試すチャレンジ精神」という、人間側の態度へと向かっていった。AIが個人の能力をどれだけ拡張しても、それをどの方向に向けるのかを決めるのは、やはり人間の側にあるからだ。

ここまでのディスカッションの内容を受けて、村岸はセッションをこう締めくくった。

村岸

今日のお話を伺っていて印象的だったのは、三社それぞれが違う立場から、同じ問いに向き合っていたことです。どんな未来を描くのかというビジョンがあり、そのためにどんな仕組みやルールを用意するのかがあり、さらにそれを動かしていく一人ひとりの好奇心や意志、チャレンジの姿勢がある。その三つが折り重なるところに、AI時代における人と組織の姿が見えてきたように感じます。

AIが前提になる世界では、ツールそのものよりも、「それを使って何を実現したいのか」「そのためにどんな一歩を踏み出すのか」という問いのほうが、ますます重みを持っていくのだと思います。

生成AIが当たり前の前提になる世界で、どんな未来を描き、そのためにどんな仕組みと態度を育てていくのか──その問いに向き合い続けることこそが、これからの組織づくりにおける大きなテーマになっていくだろう。

Credit
執筆
栗村智弘

個人事業主。職能は取材・執筆・編集およびプロジェクトマネジメント。一般社団法人デサイロ、一般社団法人B-Side Incubator、『designing』編集部、ほか複数の事業会社・スタートアップ・Webメディアで継続的に活動中。1996年度生まれ。早稲田大学文学部卒。競技歴は野球、バスケットボール、空手、陸上、ハンドボール。猫とうさぎと神奈川県在住。

Tags
Share